霊感は遺伝するのか
霊感というものは世代を超えて遺伝するらしい。
しかし、必ずしも遺伝をするのではなく、霊感が強い祖母から父へ遺伝し、それから子供へと霊感が遺伝する中で、徐々に霊感が弱まっていくということがあるようだ。
結果的に霊感というのは100%遺伝するわけではなく、ある程度は遺伝するが、本人の資質によるところもあるのだろう。
逆に霊感がない両親からは、霊感がある子供が生まれることもある。
そのため100%遺伝によって
霊感が決まるわけではない。
祖母の経験
私の祖母は、私の実家で亡くなるまで暮らしていた。
祖母はその実家で
幽霊を何度か見ていた。
幽霊は祖母の亡くなった姉などの肉親で、上半身だけ現れるようだった。
そんな話を父が聞くと「おふくろ、ボケたのか?」などと言ってとりあわなかった。
しかし、
祖母の不思議な話はそれだけではない。
一番印象に残っている話といえば、祖母と同居する以前なので、私が小学生から中学生の頃に聞いた話しだ。
末っ子の叔父がまだ2歳くらいの頃の話なので昭和20年代だと思う。
ふいに祖母は「実家に帰らなければ」と焦燥感にかられたそうだ。
当時住んでいたのは北関東。祖母の実家は北陸。
鈍行列車で乗り継いで相当な時間がかかる場所だ。
祖父から「何故急に慌てて実家に帰るのか」と聞かれた際にとっさに出た言葉が「もうすぐ、何月何日だから!」という言葉だったという。
何故、その日付が口から出たのか、祖母も分からなかった。
祖母の様子があまりに真剣であったため、祖父も帰郷を許したそうだ。
祖母自身も理由は分からないまま、実家へ向かうこととなった。
末っ子の小さな2歳の叔父を置いて行けず、一緒に連れて行くこととなった。
祖母は小さな叔父を抱いて、ごった返した電車に乗り込んだ。
しばらくして、祖母はぐっと手をひかれたそうだ。
「ねえさん、こっちの席空いているから座りなよ!」と、その手の主(声は男性。手しか見えない)は人をかき分け祖母を引っ張っていた。
するとその先にぽっかりとひとつ席が空いている。
お礼を言おうとしたが、手の主は見当たらない。
祖母はなんだろう、と少々不安に思いながら、その空いている席に叔父を抱いて座り、実家へ向かったそうだ。
実家に帰ると久しぶりの帰郷で親族にはもてなされたそうだ。
何日か滞在したのだが、ある日祖母の兄が突然死した。
その日は、祖母が祖父に何故実家に帰るのかと聞かれた際に口から出た「○月○日」であった。
祖母は、
虫の知らせだったのだと悟った。
他にも祖母からは不思議な話を聞いたが、覚えているのはこの話程度であり残念である。
父の経験
尚、祖母の話によれば、幽霊の事など全く信じない父も、小さい頃は人の不幸を予言していたそうだ。
父ではなく祖母からの話ではあるが、小さい頃の父は「黒い影が見える」と言っていたそうだ。
たとえば「○○のおじさんの後ろに黒い影が見えるよ」と言う。
祖母は○○のおじさんは健康で奥さんの方が病弱なのに…と思っていると、父が言っていた○○のおじさんが怪我をする、といった具合である。
当の父は「そんな記憶はない」「俺は幽霊など信じない」「幽霊がいるなら会ってみたいものだ」などと豪語する。
実家には縁起の悪い13階段を二つも作り、鬼門に台所を置くような父である。
私の経験
平成に入り数年後、祖母は他界した。
祖母の孫の中で私だけが北関東におらず、祖母の死に目に会えなかった。
お葬式の時に親戚が集まったが、祖母の部屋に宿泊した叔父のお嫁さんが翌日「白いネズミが出てきた。夢だったのか、現実だったか分からないけれど、おばあちゃん、鼠年だったわよね。
あれはおばあちゃんだったのかも」と話していた。
その後数回、私は祖母の幽霊を見た。
当時私は会社の寮に入っていたが、祖母が現れるのは寮の玄関であったり、私の部屋であったりで、いつも心配そうに私の事を見ていた。
ある時は、ふと目が覚めると祖父が私の上に正座をしていて私を見つめていた。
死に目に会えなかったので、私の事を心配しているのだろうと思った。
いつも「おばあちゃん、大丈夫だよ」と心の中でつぶやいた。
学生の頃、私が夏休みなどに帰省しまた大学に戻るとき、祖母はバス停まで見送りに来てくれ、バスが見えなくなるまで見送ってくれていた。
私も、祖母が小さく見えなくなるまで祖母を見ていた。
これ以外にも私は怖い思いをしたことが少しだが、ある。
だけど、気づかないふり、見えていないふりをしてきている。
私と息子の経験
話は比較的最近のところに飛んでしまうが、私の息子が小学生の頃、ハワイのホテルでも親子で不思議な経験をした。
閉めたはずのドアが、勝手に空いている。閉め忘れたのかとも思いたいが、多分違う。
お子さまも見かけたからだ。
が、その時も、気づかないふりをしていた。
ドアの立て付けが悪いのだろう、と思いたかった。
夜、子供が寝てから、翌日帰国の為リビングで荷造りをしていたら、子供が起きてきて怯えた顔で私の所に来て言った。
「お母さん、今、僕を脅かすために、こっそりお風呂のドアを開けた?」
私は風呂場には行っていない。
子供はお風呂のドア(引き戸タイプ)が開く場面を見たというのか。
子供には「そうそう。さっきね、もう寝たかなと思ってね・・・」と適当に誤魔化した。
子どもの顔はこわばっていたが、隣に寄り添ってなんとか寝かしつけた。
さて、あれは気のせいではなかったのか。息子も見たのか。息子も見えてしまうのか。
色々な意味で焦りながらリビングに戻ると、そこにお子様がいた。
ソファにちょこんと腰かけていた。
伸ばした足は床につかず、宙にぶらぶらしている、まだ小さいお子様だ。
ごめんね、私は気づいてないの、そう心に言い聞かせて、目を合わせないようにしつつ、荷造りを適当に終わらせて私も子供の隣で眠った。
祖母、父、私、息子、全員が何らかの霊的な経験がある、と言う結果。
遺伝するのか。
偶然か。
それとも気のせいか。
万一そうだとしても、父のように大人になったら全くその気もない人間になる事もあるだろう。
息子もそうあって欲しい。
あるいは、偶然、気のせいであることを望んでいる。